彼女は異文化
じめじめとした梅雨が続いていた。
雨は嫌いだが、お気に入りの傘がさせるのはちょっと嬉しい。
透明のビニールの生地に、青い水玉がところせましと並んでいる。 カルピスみたいで可愛い。
カルピスの傘をさしながら、夜の雨の中を歩いていると、ウォークマンからSuchmosの「Fallin' 」が流れてきて、うわぁ、とため息がでた。この曲は夜の雨に相応しい。「Fallin'」が終わると、次はペトロールズの「雨」が耳朶に触れた。
このウォークマンは買ってから大分年季が入っている。もしかして、九十九神がとりついているのではないだろうか。
ナイス選曲だ、グッジョブ、DJ.九十九神。
そんな風に梅雨を楽しんでいたが、友達と山中湖で遊ぶ約束がダメになったのは悲しかった。
先日リベンジということで山中湖に行ってきた。梅雨はどこかに吹き飛ばされ、見事な晴天の日だった。私たちは歓喜し、ドライブの車中でパピコを半分にして食べ、ハンモックカフェでアイスコーヒーを飲みながらハンモックに揺られ、木漏れ日の中くつろいだ。
せっかくだからとサイクリングで湖を一周し、一息ついていると細い川の向こうから何かが優雅に泳いでくるのが見えた。
白鳥の親子だった。小さな子どもが3羽、お母さん鳥の後ろにくっついている。「え~~~、こんなことってある~~?」と、非現実的な光景にぼーっとして見ていると、白鳥たちは私たちの目の前で餌をとり始めた。 母鳥が子どもに教えているようだった。
とても良い1日を過ごすことができた。何より、久しぶりに友達に会うことができたのが大きかった。友人は「A」という名前にしておこう。
Aは圧倒的に変わっていて、かつ自由人だった。 時間にルーズだし、定職についてないし、夏になると地方にバイトに出て(旅館の仲居や、ラベンダー畑で売り子、湖の傍のレストランでウエイターなど)、お金が貯まるとふらっと外国に旅に出てしまう。
この間は年賀状の代わりにトルコから絵葉書が届き、安否を知った。
Aは学生時代にできた友人だ。いつも笑顔で、人一倍明るくて、初対面なのにいきなりリトルマーメイドの「Part of your world」を歌いだし、一同を困惑させた。後で聞いたら、彼女はあの映画を最後まで観たことがないという。 このように、比較的静かな私とAは正反対といえる。
本当にAと私は正反対の性格をしている。彼女は予定に縛られるのが嫌いだ。一方、私はできるだけ決めておきたい派だ(決めておいた方が楽)。 観たい映画や行きたい場所が異なると、Aは「じゃ、やめよっか?」とか「別行動する?」と言ってくる。ふつうはお互い譲ったり、合わせたりするところだが、一切ない。
Aはわたしにとって異文化だった。比較的考え方が似ていた地元の友人とは違う。戸惑うこともあるけれど、私との違いが何故か心地よかったし、面白かった。
Aは自分の考えを人に押し付けない子だ。
「あなたはそうだろうけど、私はこうなんだよね。まあ違っててもいいじゃん。」とあっけらかんと言う。
共鳴しあう部分もたくさんあるのが不思議だ。
好きな音楽や漫画が驚くほど似ている。私が最近はまっている音楽をAもはまって聴いていたり、熟読している漫画が一緒だったりする。
大きい犬が好きなところ(ゴールデンカムイの影響でオオカミにはまっていて、動物園に行こうと画策している)、ラベンダー色が好きなところ、赤ちゃんが苦手なところ(というか接し方がわからない、抱っこすると傷つけてしまいそうで怖い)
これらが今回会って確認した私とAの共通点。
探せばまだまだたくさんありそうだ。
そういえば宗教の話もちょっとした。
これは次の時に書くことにする。